◎胸郭出口症候群とは?
胸郭出口とは、第1肋骨、鎖骨、前斜角筋、中斜角筋などによって
構成される胸郭の上端から頚の下部の構造のことです。
この部分を通る鎖骨下動脈や、静脈、それに腕神経叢の神経が肋骨、鎖骨、前・中斜角筋、
などによって圧迫されることがあり、そのために引き起こされる一連の症候群を
胸郭出口症候群といいます。この概念には、頸肋症候群、斜角筋症候群、肋鎖症候群、
過外転症候群といった型を含んでいます。
◎疫学
15〜50歳の各年齢層にみられますが、20代が最も多いです。
なで肩体型の人に起こりやすい傾向があり、一般に女性のほうに多いです。
両側性より左右どちらか片側性のことが多いです。
◎成因と病態生理
①頚肋症候群:頚肋の存在によって斜角筋三角の底部が狭まれて神経・血管の圧迫を生じる。
②斜角筋症候群:前斜角筋もしくは中斜角筋の痙縮によって神経・血管の圧迫を生じる。
③肋鎖症候群:第1肋骨と鎖骨の間が狭く、そのために神経・血管の圧迫を生じる。
④過外転症候群:上肢を過外転することによって、烏口突起のところで神経・血管が過伸展され小胸によって圧迫を 生じる。
◎症状
上肢の痺れ感、放散痛、脱力感などの自覚症状が目立ちますが、
ときにチアノーゼや筋委縮のような他覚的所見を伴うこともあります。・
◎診断
①身体の神経学的テスト
数種類のテストがあります。いずれも検者が被検者の橈骨動脈の拍動を触れながら
特定の姿位をとらせることによって、脈拍を触れなくなる事をもって陽性とします。
②血管撮影:手術を前提に考える時、実際にどの部分で圧迫されているのか知るために行います。
◎治療
①保存的治療
・姿勢の指導矯正:上肢の外転や、保持することの多い職業では、しばらくの休職が必要です。
●上肢の三角巾による保持。
●上肢帯筋肉強化運動
●温熱療法:ホットパックや超音波療法
●鍼治療による筋肉の弛緩
②観血的治療
●第1肋骨切除術:胸郭出口症候群の圧迫部位でもっとも多いのは肋鎖間隙において
であるため、その場合、第1肋骨切除が効果的です。
●頚肋切除術:頚肋が存在し、それによる圧迫が主たる原因であると判断されたら、
適応があります。前斜角筋の切除を併用する事もあります。
◎予後、、、比較的良好です。